グローバル科学トピック:013
September, 2010
いっそ宇宙へ出かけませんか!?
地表からほんの100kmほど空へ昇れば、そこはもうあこがれの宇宙空間です!
みなさん!とうとう新学期の始まりですね。今年の夏休みはどう過ごしましたか?友だちや保護者のかたと一緒に、海や山、川やプールへ出かけたりしたでしょうか? えっ?冷房のきいた部屋でゲームばかりしてたよ!なんて人もいるんですか?たしかに今年はへたに外で遊んでいたら熱中症になってしまうほど暑さが厳しかったですよねぇ(今もまだ毎日暑いですが…)。
地球はどんどん温暖化する一方ですし、来年の夏休みは、いっそそんな暑さとは全く無縁な、いつでも絶対零度(マイナス273℃)の世界=宇宙へと旅行に出かけるのはどうでしょうか?
えっ宇宙?そんな遠くまで行けるわけないよ!
…なんて思っていませんか?
一般的に高度100km 以上が “宇宙” とされていますが、100km といえば、だいたい東京から熱海までの距離と同じくらいです。北海道でいえば、札幌から富良野あたりまで。なので、海外旅行はもちろん、ちょっとした国内旅行よりも、宇宙までの距離はずっと短いんですよ!
と聞くと、なんだか宇宙が身近になった気がしませんか?
人類は宇宙へ
ユーリイ・ガガーリン人類が初めて宇宙に飛び出したのは、1961年4月12日。ソビエト(現・ロシア)の宇宙飛行士、ユーリイ・ガガーリンを乗せた宇宙船「ボストーク1号」が、1時間48分かけて地球一周の宇宙飛行を行い、無事に帰還しました。その後もアメリカとソビエトという世界の2大国が競い合い、1969年7月20日、今度はアメリカの「アポロ11号」が、人類初の月面着陸を成し遂げました(グローバル科学トピック:009)。
スカイラブ70年代に入ると、1971年にソビエトが「サリュート」、1973年にアメリカが「スカイラブ」という宇宙ステーションを相次いで打ち上げます。これにより宇宙空間での長期滞在と、地上ではできない実験を行うことができるようになりました。
ちなみに、1975年にはアメリカの「アポロ」、ソビエトの「ソユーズ」両宇宙船が宇宙空間でドッキングし、共同で科学実験を行っています。これまで開発競争をしてきたが両国が、協力へと舵をきった象徴的な出来事でした。
そして1998年、世界15カ国が協力して、地球の上空、高度400kmの宇宙空間で国際宇宙ステーション(ISS:International Space Station)の建設が始まりました。参加各国の財政難や、事故など多くの困難を乗り越え、現在も宇宙飛行士の皆さんが滞在して科学実験や保守点検を行いながら、今なお建設が続いています(完成は来年の予定)。最近では、野口聡一さんや山崎直子さんが滞在したことが記憶に新しいと思います。
ISS(完成予想図)
さて、ここからが本題です。そのISSには、実は私たち “民間人も行ける” って知っていましたか?
民間人で初めての宇宙飛行とISS滞在を行ったのは、アメリカのデニス・チトーさん(当時60歳)。2001年4月28日にソユーズで出発し、ISSで5日間のバカンス(?)を過ごしました。この宇宙旅行のために彼が支払った費用は、ガガーリン宇宙飛行士訓練センターでの6ヶ月の訓練代と旅費、合わせてザッと2000万ドル…、1ドル=85円で換算すると約17億円でした!!!
宇宙旅行のおすすめプラン!そのお値段は…?
そんな大金はとても払えないよ!という方には、もう少しお安いプランがありますので、どうぞご心配なく(?)
イギリスの Virgin Galactic 社は、20万ドル(およそ1,700万円)の格安!宇宙旅行プランを用意しています。その旅行スケジュールは以下の通りと発表されています。
スペースシップ2を送り出す、ホワイトナイト2
3日間の訓練を受けた後に「スペースシップ2」に乗り込みます。「スペースシップ2」は「ホワイトナイト2」という独特な形をした飛行機で、高度16kmあたりまで運ばれてから切り離され、そこから一気に加速。3.5G(地上の重力の3.5倍)の力を受けながら、高度110kmの宇宙空間へ到達します。そして青い地球の姿を眺めながら、無重力状態での宇宙飛行が…、およそ4分間(!!)。地球に戻るまでの、トータル・フライトタイムは、約2時間の予定だそうです(ちょっと短いですね)。
で、でも、いかがですか?17億円と比べたら、ずいぶん身近な金額ではないでしょうか?
…と、思っていたら、今度はアメリカのバージニア州に本拠がある Space Adventures 社が、なんとたったの10万2000ドル(およそ870万円)の超格安プランを発表しました。内容は、先ほどの Virgin Galactic 社のものとほぼ同じですが、値段は一気に半額!このペースでいけば、数年後には本当に私たちにも手の届く値段になるかも!?と期待も膨らんでしまいます。
それでもまだまだ高いし、値段が下がるまで待てない!というわがままな方(?)には、こんなプランもあります。
誰もが思い描く「宇宙」の景色高度100kmまで行かなくても、実は高度30kmあたりまで行けば、青い地球と真っ暗な宇宙空間という、誰もが思い描く宇宙の姿を眺めることができます。まさに “宇宙の入り口” といったところでしょうか。
そしてこれくらいの高度であれば、高性能の戦闘機であれば到達することが可能ですから、戦闘機の搭乗ツアーを利用すれば “宇宙の入り口” をその目で見ることができます。お値段は、ガクンと安くなって、およそ200〜300万円のようです。今度こそ、ずいぶん手の届くところまで値段が下がってきたのではないでしょうか!?
え? まだ高すぎますかっ!?
…う〜ん困りましたね。それでは、仕方がありません。とっておきのプランをご紹介しましょう!
上で述べたように、宇宙を “見る” ためには少なくとも高度30kmに到達しなくてはなりませんが、わざわざ戦闘機を持ち出さなくても、もっと手軽な方法があります。それはヘリウムの風船を使うことです!
といっても、さすがに風船では人間を持ち上げるのは難しいですから、ご本人様が行くことは勘弁していただかねばなりません。でも、家庭用のカメラやビデオなら風船で飛ばすことが十分に可能です。自動で撮影しながら飛ばすことができれば、 “宇宙の入り口” を撮影できるというわけです。そしてなによりこの方法では、材料費だけなら数万円で実現可能です!(あ。でも、あとで回収するのが大変難しいという難点はあります!)
このヘリウム風船にカメラをくくりつけて宇宙の手前まで飛ばす実験はすでに世界中で行われていて、たとえばYouTubeにはすでに膨大な実験動画があります。サンプルをひとつ、ご紹介しておきましょう。
およそ50年前、人類初の宇宙飛行をおこなったガガーリンは、「地球は青かった」という有名な言葉を残しました。さて、あなたが自分の眼で宇宙を眺めたら、一体どんな言葉をつぶやくでしょうか?もしも何も思い浮かばなければ、「宇宙は意外と近かった」なんていうセリフはいかがでしょうか?
宇宙航空研究開発機構
ヴァージン・ギャラクティック社
クラブツーリズム(ヴァージン ギャラクティック社と提携)
スペース・アドベンチャー
ロシアエクスプレス ジェット機ツアー
HALO(High ALtitude Object) Helium Balloon Mission to Near-Space
「宇宙旅行ハンドブック」(2006年)エリック・アンダーソン著 小林淳子訳
Photos used in this article are courtesy of respective owners : “Yuri Gagarin” from The Russian Institute of Radionavigation and Time, “Skylab” public domain, “International Space Station” public domain, “SpaceShip2 and WhiteKnight2” by Virgin Galactic, “The blackness of space - 100,000ft Oklahoma State University - Astro Project” by Space Adventures,