グローバル科学トピック:001
September, 2008
大型ハドロン衝突型加速器の実験が始まる!
今、ジュネーブで世紀の大実験が始まる。
国土面積が日本の1/10ほどのスイス。そのスイスの最西端はフランス国境にほど近い都市、ジュネーブ。ここは国際連合(国連)の欧州本部があることで有名ですが、ジュネーブの郊外には、もう一つ重要な組織の本部があります。その名も『CERN(サーンあるいはセルン)』。このCERNは、一般には「インターネット」や「ホームページの仕組み(html言語)」が開発された機関として有名ですが、本来は「欧州原子核共同研究機関」といい、世界最大規模の「素粒子物理学」の研究所です。
...といっても、ナンのことかわかりませんよね。難しいことは脇に置いておきましょう。
このCERNのあるジュネーブとフランス国境にまたがる地下100mに、「大型ハドロン衝突型加速器(LHC)」という、とてつもなく巨大な実験施設があります。
LHCは、円周の全長が27km(比較:JR山手線一周=34.5km)もあるトンネル状のパイプになっており、その円周上に6階建てのビルほども高さがある観測点4箇所と観測装置5台が設置されています。12年間をかけて建造されたこの人類史上最大規模の実験施設が、遂に9月10日稼働し、宇宙の見方が根本的に変わる(かも知れない!)世紀の実験が開始されました。
この実験には、世界中から何千人もの科学者とエンジニアが参加しています。右の写真は、LHCの中でも一番大きい「アトラス実験」の検出器。(PHOTO © CERN)
LHCでは今後、大きく6つの実験が行われますが、中でも現在、世界中の注目を集めているのが、「ATLAS実験」と呼ばれる、「陽子ビームを光速(の99.9999998%)まで加速し、それを正面衝突させて高エネルギー物理現象から生じる粒子を観測する」というもの。
...えっ?わかりませんか?わかりませんよね。はい、細かいことは、もう一度脇に置いておいて、その実験は一体なにが凄いのか?というと。
光の速度まで加速させた陽子同士を正面衝突させることによって、ブラックホールができちゃうかも知れないそうです!
私たちの宇宙にあまねく在るのに(らしい)、光を反射しないため光学的に観測できない(目に見えない)「暗黒物質」が観測されるかも知れないそうです!
通称「神の粒子」と呼ばれる、「ヒッグス粒子」が姿を現すかも知れないそうです!
私たちの宇宙以外に「無数の(無限に?)別の宇宙が存在する証拠」が見つかるかも知れないそうです!
私たちが認識することのできる4次元(幅+高さ+奥行き+時間)を超えた、「高次の次元」の扉が開くかも知れないそうです!
ひょっとすると「時間が止まったり、『今』より先に進んだり反対に動いたり」するかも知れないそうです!
このLHC実験には、世界62カ国から延べ7,391名に及ぶ科学者及びエンジニアが参加しており、上記の「ATLAS実験」には日本のチームも参加しているそうです。
科学が発達し、光学機器、PCを始めとした検出装置の精度が上がり、今やほとんどの事を知っている「つもり」になっている私たちですが、本当は、たとえば宇宙に関し、見ること&検出できることは4%ほどで、あとの96%は(ということは、ほとんど全ては)まだわかっていないそうですよ!
上記「ATLAS」を始めとしたLHC実験の本格始動は10月中旬からです。さぁ!なにが飛び出すか?目が離せませんよっ!!!
上記のYouTubeで見られる映像はCERNの公式ビデオです。ナレーションが英語なので意味が解らないかも知れませんが、映像だけでもLHCの壮大なスケールがわかって面白いですよ!