グローバル科学トピック:短信
December, 2008
大型ハドロン衝突型加速器(LHC)の修理が長引いています!
3ヵ月前にこの「グローバル科学トピック」を始めた時に第1弾のトピックとしてお届けした、CERN(欧州原子核共同研究機関)の大型ハドロン衝突型加速器・LHC。満を持しての稼働実験直後に故障してしまい、そのまま本実験が延期されていますが、先日、続報が届きました。報道によりますと、まず今回の故障の原因ですが、(驚いたことに)たった1箇所、ハンダ付けのミスがあったもようです。
また今後の展望ですが、現在、CERNでは『とりあえず壊れた箇所を修理して2009年夏頃に本実験を開始する』か、あるいは『万全を期して、しっかりじっくり集中した修理を行い、2010年以降に再稼働させる』かを検討中とのことです。
今のところ、来年の夏に早めに再稼働を目指す計画が有力らしいですが、正常に動いた場合でも何が飛び出すか(どういう結果になるのか)わからないLHCです。さぁ果たしてどうなりますことやら。引き続き目が離せません!
グローバル科学トピック:004
December, 2008
知ってるようで知らなかった!地球の秘密:ベスト10
年末特別企画!私たちの母なる地球にまつわる科学知識。知ってるようで知らなかった!地球の秘密:ベスト10。
10位:地球の中心までは、どれくらい深い?
地球の中心部は、地表からおよそ6,400kmの深さにあります。 6,400kmというと、だいたい東京からハワイのホノルルまでの距離に相当します。もしくは、北海道・札幌から沖縄・那覇まで往復し、さらにもう一度、那覇に行ったくらいの距離です。その距離を地面の下に向かって掘っていくと、地球の中心に行き着きます。
ちなみに私たちの足の下の大地は固いですが、この固い地面の層は実は66kmほどしかなく、その下に5,000km以上に渡って広がるマントル層と外核層はなんと「液体」です(マントル層は岩石でできているものの、動きます)。地球をリンゴに例えると、固い地面の層はリンゴの皮よりも薄い!のです。
9位:地球の内側はどれくらい熱い?
地面を掘っていくと、およそ1km掘るごとに20度ずつ温度が上がります。そして、中心部(内核、あるいは中心核と言います)は、少なくとも4,000度以上の高温状態(一般的に6,000度くらいと考えられています)であると言われています。
8位:地球上の場所によって重力の強さが違う?
Data : NASA地球上の場所による重力異常
(データ:NASA)
信じられないかも知れませんが、重力は地球上のさまざまな場所によって違います。右の図は、アメリカのNASAが2002年に公開した「グレース」という衛星が計測した地球の重力分布図です。黄緑色の部分が平均的な重力を示している場所で、青い場所は重力が弱く、赤い場所ほど重力が強くなっていることがわかります。インド南部やカナダ東部は重力が弱いですね。また、日本は中部地方から東北地方にかけて重力が強くなっています。
なお、場所によって重力の値が違う理由は色々と考察されていますが、まだ正確にはそのメカニズムが解明されていません。
7位:月は昔からずっと地球の近くにいた?
今から約10億年ほど昔、月はもっと地球に近い場所を回っており、また地球は今よりもずっと早く自転していたことが解っています。その頃、月の周期(新月→満月→新月の1サイクル)は20日間(現在は28日間)で、地球の1日は18時間(現在は24時間)でした。
では将来はどうなるのでしょう?月は今も1年に4cmほど地球から遠ざかり続けています。また地球の自転も毎年10万分の1秒ずつ遅くなり続けています(ちょっとずつ1日の長さが延び続けています)。
6位:地球上はいつもどこかで稲妻が発生中?
平均すると、この地球上では毎秒100回の稲妻が発生しています。といっても、これは光の筋が地面に届くものだけを数え上げた場合の数値です。実際のところ、地球の大気中では毎分1,000箇所で雷雨が発生しており、6,000個以上の稲妻が走っています。ただし、これらのほとんどは雲の中で起こっているため、一つ一つを目で確認できるわけではありません。
5位:南極の氷が溶けたら、海面の水位はどれくらい上がる?
南極大陸は氷でできています。これは地球に存在する氷の実に90%にあたり、また真水(淡水)の70%にあたります。この南極大陸の氷がすべて溶けたとしたら、海面の水位はおよそ67mほど上昇します。これは20階建てのビルに相当する高さです。
昨今、地球温暖化による海面水位の上昇は深刻な問題となっていますが、国連によると西暦2100年までに、世界的に海面水位が1m上昇すると警告されています。数字だけ見ると、「たかが1m?」と思われるかも知れませんが実はこれは大変なことで、たとえば日本の場合、海面が1m上昇すると、全国の砂浜の90%が水没してしまいます。
4位:色とりどりの花火は地球のおかげ?
夏の風物詩である花火は、赤や青、黄色や白など、さまざまな色で光る火花を飛ばします。この花火の色は、火薬に混ぜられた鉱物(ミネラル)の燃える色であることをご存知ですか?
真っ赤に燃える花火の色は、ストロンチウムという金属の燃える色です。同じように、青い火花は銅、黄色い火花はナトリウム、そして黄金色は鉄と炭を混ぜた粉が燃える色です。
ちなみに花火の閃光と爆発音は、アルミニウムの粉を混ぜることで実現しています。
3位:位地球の海と大陸は太古の昔からずっと同じ?
いいえ、まったく違います。水の起源はまだ確定していませんが、多くの科学者の推定としては、原始太陽系を漂っていた隕石が衝突・合体して地球ができた時、その隕石に含まれていた水分が水蒸気として原始地球を取り巻く大気となり、やがて地球の温度が下がるとともに水として降り注いだというもの。あるいは、氷でできた彗星が幾つも原始地球に衝突し、水をもたらしたという説もあります。
大陸に関しては、およそ3億年前に「パンゲア」と呼ばれる1つの大きな大陸ができ、それが長い年月をかけて分割されていったと考えられています(大陸移動説と言います)。
2位:地球はいつまでも存在する?
天文学者は、この先、数十億年すると、太陽がどんどん膨張し、やがて地球を飲み込んでしまうだろうと予測しています。もしその時まで地球上に人類が存在していたとしたら、もちろん太陽の莫大な熱で地球もろとも溶けてしまうことになります。
反対に、太陽の膨張活動自体が地球の軌道を押しのけるため、飲み込まれることはないだろうという説もあります。またそんなに長いあいだ人類が存続できたとしたら、科学と文明の発達によってそうした危機はどのようにでも回避できるだろうという見方もあります。
1位:地球にいる一番強い動物は?
地球上に存在する1億種ともいわれる生物の中で、なんといっても一番「強い」のは... いえいえ。ライオンやトラ、シャチやサメ、タカやワシではありません。人間?これも違います。地球上に存在する生物の中で文句なしに一番強いのは、「クマムシ」という体長0.2mm〜1mmほどの、世界中どこにでもいる8本足の緩歩動物です。
クマムシの種族には実に900以上の種類があり、深度4,500mを越す深海から、標高6,500m以上の高山にまで本当にどこにでも存在します。そして驚いたことに、乾燥や低温、高圧や酸素不足など、棲息している環境に変化が起こると、自動的に「クリプトバイオシス(無代謝)」という状態になって代謝(生態活動)を1万分の1に下げる能力を持っています。この超能力ともいえる性質のため、-273度の極低温から+151度の超高温、真空、6,000気圧でも生命を維持し、またアルコールをはじめとする各種化学物質への露出、人間の致死量の1,000倍のX線照射にもビクともしません(DNAの損傷を自動修復する能力まであることが解っています!)。
実際、2007年秋に欧州宇宙機関(ESA)が打ち上げた宇宙実験衛星と一緒に宇宙に連れていかれたクマムシたちは、宇宙服も酸素ボンベもなしのまま、温度差が激しく各種の有害な宇宙線や太陽光が満ちる真空の宇宙空間にさらされましたが、大部分が生き延び、地球に戻ると普通に復活して活動を再開したそうです。
いかがでしたか?これからクリスマス、お正月と一年中で一番にぎやかな季節ですが、食べて遊んで、笑って眠って、楽しい新年をお迎えください。また来年、キャラバン・ホームページでお会いしましょう!