「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
静電気、光、その他に関する質問
瀬川さんからの質問:
「電気って、熱いですか?」
下の絵を見てください。豆電球に乾電池をつないで、豆電球が点灯しています。電気は、乾電池のプラス極(+)から電線を通って豆電球のフィラメントの中を流れ、乾電池のマイナス極(−)に流れています。
この状態で電気が流れているあいだ、豆電気は点灯しっぱなしになりますが、この絵の中で、熱くなるところはどこだかわかりますか?
豆電球が熱くなりますね。実際は豆電球のニクロム線という材料でできているフィラメントが熱くなり、そこから熱と光が出ているのですね。 ですが、銅線でできている電線は熱くなりません。電線にも電気が流れているのですが、電線は熱くならないのです。
このことから電気そのものは熱くないということが判ります。 電気そのものは熱くないのですが、電気が流れる物が熱くなるのです。 でも、電線のように熱くならない物もありますね。 この違いはなんでしょうか? このことについて、少し説明いたします。
物には電気が流れやすい物と、流れにくい物があります。 上の絵でいえば、電線の材料である銅線は電気を流しやすく、フィラメントの材料であるニクロム線は電気を流しにくい物です。 この電気の流れにくさを「電気抵抗」、あるいは単に「抵抗」と呼びます。 抵抗は電気の回路図の中では「R」と書き、単位はオーム(Ω)と書きます。
電気を流しやすい物は抵抗(R)が小さく、流しにくい物は抵抗(R)が大きいということになります。
線の太さと長さが同じ銅線とニクロム線の抵抗(R)を、抵抗の大きさを表わす抵抗率(ρ)という値で比較すると、以下のようになります。
銅線:1.56 ×10(-8)Ω.m
ニクロム線:110.00 ×10(-8)Ω.m
ニクロム線は銅線より、約70倍も抵抗が大きいのです。
このような抵抗をもつ物に電気を流すと、熱が発生します。 これは電流というエネルギーが熱というエネルギーに変換される為で、「電気が仕事をした」という言い方をします。
たとえば、やかんに水を入れて電気コンロでお湯を沸かす時、電気が電気コンロのニクロム線を流れて熱が発生し、その熱でやかんの中の水を温めるのですね。 電気が仕事をするとは、こういうことですね。
電気が1秒間にする仕事の量を電力といい、Pと書き、単位はワット(W)と書きます。 皆さんの家庭にある電気コンロや蛍光灯、あるいは電球を、100ワットとか60ワットとか呼んでいるのを聞いたことがあると思いますが、それはこの電気の仕事量を表しています。
この電力=Pと、電気の量である電流=I、電気を流す材料(たとえばニクロム線や銅線)などの抵抗=Rとの間には、下記のような相関関係があります。
P=I×R×R=I×(W)
この関係式から、上の絵でなぜ豆電球のニクロム線が熱くなり、銅線が熱くならなかったのかを考えてみましょう。
流れる電流は銅線もニクロム線も同じですから、抵抗の大きいニクロム線のほうがPが大きくなります。 Pが大きいということは、1秒間にする電気の仕事量が多いので、発生する熱の量が大きくなる、ということを意味します。
というわけで、豆電球が熱くなり銅線は熱くならないのです。
ちょっと説明が難しくなってしまいましたので、簡単にまとめますと...
電気自体は熱を持っていないけれど、電気が物の中を流れて仕事をすると、電気が熱に変換されて物が熱くなる。
ということです。でも、物がどれくらい熱くなるかは、物の抵抗の大きさや流れる電流の量によって変わりますので、つまり電力の大小によって決まります。 この、電力と電流と抵抗の関係は...
P=I×R×R=I×(W)
として表されます。
Pが大きいほうが仕事をする量が大きいので、熱も高くなるのですから、
◆ 同じ物同士なら、電流が多いほど物の温度は高くなります。
◆ 流れる電流が同じなら、抵抗が高い物ほど温度は高くなります。
最後に注意してほしいことがあります。
銅線は抵抗が小さいので熱くなりにくいですが、抵抗が小さくても大きな電流を流すと熱が発生します。 家庭で一つのコンセントにたくさんの電化製品を繋ぐと大きな電流が流れます(熱が発生します)ので、注意しなくてはなりません。