「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
静電気、光、その他に関する質問
小林梨花さんからの質問:
「原稿と同じものができてビックリしました!」
「コピー機になってみよう!」の実験では、皆さんに静電気を使ってコピーを作っていただきますが、コピー機が静電気を使って原稿を複写していいることは、あまり知られていません。 私たちの身の回りには沢山の商品が溢れていますが、その仕組みや原理は知らないことが多いですね。 仕組みや原理を知ると、科学や技術の面白さが伝わってきます。 そしてキャラバン隊では、皆さんに少しでも科学そして技術について興味を持っていただこうと思い、一年中、各地でイベントを行っています。
このページでは一年半にわたって皆さんからの質問にお答えしてきましたが、今回、小林梨花さんから質問ではなく「原稿と同じものができてビックリしました!」という感想をいただきましたので、最後に科学と技術について少しお話をしてみようと思います。
よく「科学技術」とまとめて言いますが、科学と技術には本質的な違いがあります。
科学は自然界の現象を解き明かし、どのような原理・原則で成り立っているのか?という真理を見つけ出すことが使命です。 自然界の現象ですから、研究の対象は生命や物質や地球や宇宙の中にあります。 たとえば静電気そのものの研究は科学ということになりますね。
一方、技術は「人間の役に立つもの、生活を豊かにしてくれるもの」を創造し、それを実現する具体的な物作りが使命です。 この使命を達成するためには、科学によって解明された原理・原則をうまく活用しなければなりません。 たとえば静電気の科学的な原理・原則を活用して、コピー機というものを設計し、具体的な機械を作り上げるのが技術ということになります。
天文学者は宇宙の謎を解き明かすために宇宙観測を行っています。 宇宙観測をするためには優れた望遠鏡や精密な分析装置が必要ですし、実際に宇宙空間に行って実験をするためには、ロケット技術や衛星技術がなくてはなりません。 宇宙観測は「科学の領域」ですが、望遠鏡やロケットや衛星は科学の原理原則をうまく活用した「技術の領域」です。
この関係を考えると、科学と技術は本質的に違うものであることがわかりますが、同時に密接な関係にあることもわかりますね。 つまり、科学の進歩が技術の進歩を促し、技術の進歩が科学の進歩を促すという関係にあるのです。
そして忘れてならないのは、科学にも技術にも「目的がある」ということです。 目的とは「なんのために研究しているのか」ということですね。 実はこの「目的を知ること」が科学・技術に興味をもつ上で、とても重要です。 日々、世界中でさまざまな科学・技術の研究が行われていますが、その目的を知ると「夢」を感じたり、「なるほど!」と思うことがあります。 それによって、自分でもやってみたいと思うのです。
たとえば「稲の研究」についてざっと調べてみると、以下のように様々な研究テーマ(目的)があることがわかります。
- 寒さに強い「稲」の品種研究
- 食べて美味しい「稲」の研究
- たくさん実をつける「稲」の品種研究
- 直播栽培のための「稲」の研究(安く、労働力の少ない栽培)
- 病気に強い「稲」倒れにくい「稲」の研究
- 柔らかく、粘りのある「稲」の研究
- 硬く、さらさらとした「稲」の研究(ピラフ、おかゆ、インドカレー用)
- イネゲノム研究(「稲」の遺伝子研究)
- スギ花粉を緩和する「稲」の研究
- 稲アレルギー原因物質を除去した「稲」の研究
- 「稲」のバイオマス研究(いねわら、こめぬか、もみがら等「稲」の生物資源の利用)
他にもまだまだも沢山ありますが、このへんでやめておきましょう。
たとえ将来、科学者や技術者にはならないとしても、科学・技術は私たちの生活や環境と密接な関わりを持っているので、それらを読み取る能力は大切です。 学校で勉強する理科や化学にも興味を持っていただきたいですね。