「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
静電気、光、その他に関する質問
藤岡はやとくんからの質問:
「静電気は電気なのに、なんで実験の時、ビリビリしないの?」
藤岡さんが言うように、静電気は電気ですね。でも、「コピー機になってみよう!」の実験では、ビリビリきませんでしたね。
まず人が電気でビリビリと感じるのは、どんな時か考えてみましょう。
ビリビリと感じるのは体の中を電気が流れた、つまり電流が流れた時です。電流が流れなければビリビリとはなりません。その電流を流す力を電圧といいますが、電圧が高いほど電流を流しやすくなります。
たとえば、家庭の電圧は100V(ボルト)ですが、常に電流が供給され続けていますので、触ったら大変なことになります。 体の中を電流が流れて、ビリビリ... どころか、場合によっては生命に関わる大事故になってしまいます。気をつけてくださいね。
それに対して静電気は溜まっている状態から、どこかへ流れてしまえば電気がなくなってしまいますので、家庭の電気とは違います。
二つの物を擦り合うと、一方がプラス、もう一方がマイナスの静電気を帯びます。 たとえば人間の体は、地面や絨毯などと擦れあって、数千ボルト以上の高い電圧を持つことがあります。 そうすると、地面や他の物に触れて電流が流れたらビリビリとなりそうですが、そうはなりません。 なぜかというと電圧は高いのですが、貯えている電気の量(静電気)そのものが少ないのです。 なにかに触れて電流が流れると、一瞬の内に電気がなくなって電圧が下がり、途絶えてしまいます。 つまり、ビリビリと感じる前に静電気がなくなってしまうというわけです。
乾燥した日、特に冬に起こりがちですが、ドアなどについている金属製のノブに触れたとたん、パシッと火花が飛んでビックリしたことがありますね。 火花が飛ぶのはプラスとマイナスの電気が近づいて火花放電という放電現象を起し、一瞬だけ電流が体に流れたからです。
このときの電流は数ミリアンペア程度と言われています。 1ミリアンペアは、千分の1アンペアという小さな値です。 しかも一瞬のできごとですから、ビックリはしますが、怪我をするようなことはありません。 これは人の体に静電気が貯まって数千ボルトの高電圧が発生し、この高電圧のために静電誘導という現象が起こって、ドアノブの金属表面に人の体に溜まった静電気とは逆の静電気が現われてくるためです。
ドアノブには初めは静電気は生じていませんでしたが、人がプラスの静電気を貯えて高電圧になっていたため、手をノブに近づけると、ノブには反対のマイナスの静電気が現われてきたのです。 そしてこのプラスとマイナスとの間で火花をともなう火花放電が起こり、この放電により、手の先とノブの間で電流が流れ、ビリッとくるのです。
ただ前に書いたように流れる電流の大きさが数ミリアンペア程度で、それも一瞬で静電気がなくなって電圧が下がり、電流が流れなくなりますので、ビックリはしますが怪我をするほどではありません。
以上の事を知った上で、藤岡さんの質問を考えてみましょう。
感光紙には静電気を与えましたが、手を近づけても触ってもビリビリとは感じませんでした。 その理由は、感光紙に貯めた静電気は700ボルト程度と電圧が低いので、手とのあいだで火花放電が起こるほどではないからです。 たとえ放電が起こったとしても、一瞬で貯まっていた静電気がなくなって電圧が下がり、電流が流れなくなるので気が付かないでしょう。
また藤岡さんの体にもともと静電気が貯まっており、数千ボルトの高い電圧になっていたとしても、感光紙は金属ではないので静電誘導が起こりにくく、貯えている静電気と逆の静電気が感光紙に現われるようなことはありません。 以上のような理由で、ビリビリとはならなかったのですね。