コピーの不思議Q&A|Ricoh Japan


コピーの不思議Q&A


「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。


静電気、光、その他に関する質問静電気、光、その他に関する質問

小鮒莉紗さんからの質問:

「静電気は何からできているんですか?」

この質問に回答するには、少し難しい説明をしなければなりませんが、細かなところは理解できなくとも、静電気のおおよそのことを知っていただければ充分だと思いますので、少々長くなりますが、気楽に読んでください。

雷雲は静電気の溜まり場

コピー機は静電気を最大限に活用しています。さて、静電気とはなんでしょう?

雷の仕組みドアを開けようとして、ノブに手を近づけた瞬間、パチッと音がしてショックを受けたことはありませんか?また夏には雷が多く発生します。ゴロゴロ、ピカッと光って、しばらくすると、ものすごい轟音が轟きわたる雷は、小鮒さんも経験していると思います。これらは静電気という電気が人間の体や雷雲に蓄えられた結果起こる、「放電」という現象です。例えば、雷雲は膨大な静電気を蓄えて、数万ボルトといった高電圧になるといわれています。

雷雲は大気(=空気)の中に浮いていますが、空気は本来、電荷的にプラスでもマイナスでもなく中性で安定しているため、電気を通しにくい物質です。ところが、膨大な静電気を蓄積した雷雲によって生じる高電圧に耐え切れなくなり、空気中の分子が破壊されて(イオン化して)、空気が電気を帯びてきます。このため、空気中を電気が流れやすくなって、それまで雲に蓄えられていた静電気が、一気に電流として流れるようになります。これが落雷といわれるものです。

静電気もれっきとした電気ですからプラス(+)極性とマイナス(−)極性があります。同じ極同士では斥力(反発しあう力)を、異極同士では引力(引き合う力)を生み出します。

右の絵を見てください。

雲は小さな水滴や氷の粒子からできています。これらが空気の激しい対流によって、こすれ合うことから静電気が発生し、雲が電気を帯びます。この、物質が電気を帯びる現象を「帯電」といいます。一般的に、雲の上側がプラスに、下側がマイナスに帯電されることが多いようです。

この雲が地面に近づくと、雲の下側に溜まったマイナス電気の影響を受けて、地表にはプラスの電気が誘導されてきます。そして、落雷は雲とは逆の極性に帯電した地表との間や、雲の間で起こることになります。

静電気の正体

電気はどこから生じるのでしょうか?実は、電気はもともと物質の中に密かに隠れ住んでいます。このことを理解していただく為に原子のお話をします。原子の勉強は高校の物理の本に出てくるようですので、小中学生の皆さんには、理解しにくいことが多いと思いますが、気楽に読んでください。

物質の分子鉱物でも植物でも、ありとあらゆる物質をどんどん細かく分解していくと、それ以上小さくなったら、もうその物質の性質を示さなくなる状態になります。これが「分子」です。

この分子を更に分解していくと、最後に、もうこれ以上分解できない状態に行き着きます。これが「原子」といわれるものです。


この図は、ヘリウムという物質の原子模型です。

原子の中心には、プラスの電気をもった原子核(陽子と中性子からできていますが、ここでは陽子のみを記載)があります。そしてその原子核の周りには、原子核と同じ量のマイナス電気をもった電子が回っています。

原子核のプラスの電気と、電子が持つマイナスの電気とは、量が同じで符号が反対です。ですから、お互いに打ち消しあってゼロとなり、物質を外から見ると、電気的にはプラスでもマイナスでもなく(=中性)、電気の性質を示さないように見えます。

ところが何かの方法で電子を原子から引き離してやると、引き離された電子は、電子がもともと持っているマイナス電気の性質を示し、原子はプラス電気の量が多くなるので、プラスの電気的性質を示すようになります。


ヘリウム原子から電子が引き離された状態右の図は、電子が高速でヘリウム原子の電子に衝突して、ヘリウム原子から電子が引き離された状態を示したものです。

このように、物質を構成する原子から何らかの方法で電子を切り離すと、電子にはもともと持っているマイナスの電気が現われ、電子を切り離された原子にはプラスの電気が現われます。また、切り離された電子が他の原子や分子に結合すれば、その原子や分子にはマイナスの電気が現われることになります。

原子から電子を切り離す方法は、電子を高速で原子にぶつける方法や、強い光や熱を加える方法など、色々ありますが、これらのことから、電気はもともと物質の中に宿っていること、そして同量あるプラスとマイナスの電気がお互いを打ち消し合うことにより、電気的性質が表に出ていないだけであることが解ります。

これは静電気に限らず、家庭で使われている電気も同じです。家庭で使われている電気は銅線などの導体(電気を通すもの)の中を電子が流れていますが、これが「電流」と呼ばれるものの正体です。

ですが、銅線は帯電(プラスかマイナスに傾くこと)していません。これは、マイナスの電気をもった電子が、同数のプラスの電気をもった原子の間を縫って移動していくので、常にマイナスとプラスの電気量がゼロになっているためです。

以上のことを雷雲に関連付けて説明します。

空気に何万ボルトという高電圧がかかると、空気中にもともと分布して動き回っていた電子は、強い電気的な力を受けて動きが加速され、空気中に存在している原子や分子(酸素原子、窒素原子、あるいは水の分子など)に激しく衝突します。この衝突によって、原子や分子から電子が切り離され、また切り離された電子と結合し、原子や分子が電気を帯びるようになります(帯電)。

物質の性質を示す最小単位である分子が電気を帯びることを「イオン化」と呼んでいますが、高電圧のもとでこのイオン化が進むと、本来は電気を流しにくい空気中を電気が流れるようになり、放電という自然現象につながります。これが落雷です。

摩擦によって静電気が発生

上記の通り、物質がプラスやマイナスの電気的な性質を示すようになることを「帯電」といいますが、物を帯電させる代表的な方法に摩擦帯電という方法があります。摩擦帯電は最も簡単で古くから知られている方法です。

物同士をこすり合わせることを「摩擦」といいますが、摩擦すると一方の物がプラスに、もう一方の物はマイナスに帯電します。小鮒さんも下敷きをこすって頭に近づけると、髪の毛が引っぱられる経験をしたことがあると思いますが、これは摩擦によって一方の物にあった電子がもう一方の物に移動し、電子を取られた物はプラスに、電子を受け取った物はマイナスに帯電することで現われる現象です。

雷雲に静電気が発生し蓄積される(雲が帯電する)のも、激しい気流の対流から生じる雲同士の摩擦によるものです。雲の中には細かい氷の粒や水滴の粒があり、それらが激しくこすれ合うことから静電気が発生するわけですから、まさに摩擦帯電が行われているわけですね。

この摩擦帯電による静電気の活用は、コピー機においてはトナーという粉のインクに静電気を持たせるのに活用しています。

コロナ放電による静電気の生成

雷雲と落雷を例にして、放電という現象を説明しましたが、落雷は「火花放電」と呼ばれる放電であり、雷雲から地表への全経路が破壊され、稲妻がつながった状態の放電です。

コロナ放電の発生これに対して、部分的に放電が起こる状態があります。たとえば、下の図は部分破壊を起こさせる装置の例です。

細い金属の線と電極の間に電圧を加え、徐々に上げていくと、電線の周りが淡い青紫色に光り始めます。これは金属の回りの空気に含まれる原子や分子が高電圧によって、破壊され、電気を帯びてくる(イオン化または電離という現象)によるものです。これは「コロナ放電」と呼ばれる放電であり、金属線の周りにだけ部分的な放電が起こっている状態です。

細い金属線の周りには電子とマイナスイオンが発生しますが、金属線にはさらにマイナス電圧をかけているため、同じ電荷を持つ電子やマイナスイオンは、この領域から斥力(反発力)によって押し出され、電極板方向に移動を始めます。

このコロナ放電によって、あたかも金属線からイオンが飛び出してくるように、金属線の周りの領域がイオンの発生源となり、このイオンが絶縁体(電気を通さない物)に付着すると静電気として蓄えられることになります。コピー機は、このコロナ放電を利用して静電気を生成し、活用しています。この状態を絵にすると、次のようになります。

電極板の構成なお、電極板の構成が図のように絶縁体と導体で構成されていると、静電気は絶縁体の表面に蓄積され、そのマイナスの静電気に誘導されたプラスの電気が導体側に現われてきます。雷雲による落雷も電気を通さない絶縁体の表面に落ちれば膨大な静電気が蓄積されますが、ほとんどが電気を通しやすい地面などの導体に落ちますので、静電気同士の斥力(反発力)で広がり、薄まってしまいます。

ということで、小鮒さんの質問に対して回答してきましたが、静電気の説明には難しい理屈をたくさん理解しなくてはなりません。なるべく解りやすい説明に努めましたが、それでも、解らないところが多いと思います。高校生になると、原子や電子のことを勉強することになりますので、そのとき思い出して頂ければ良いですね。