「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
コピー機の部品に関する質問
松浦百寿くんからの質問:
「レンズの仕組みを知りたいです」
レンズにはスクリーンに物体の像を映し出したり、実物よりも大きく見せたりする働きがあります。どのような仕組みでこのようなことができるのでしょうか。
光の屈折
まず最初に光の屈折について説明します。光は、空気中からガラスに入るときやガラスから空気中へ出るときに、その境界面で曲がる(屈折)性質があります。左の図では、光(入射光線)がガラスに入るときと出るときで、入射角と屈折角が同じ値になっているのがわかります。入射するときと出るときの物質の組み合わせが同じであれば、入射角と屈折角はいつも同じ値を示します。これは「屈折の法則」または「スネルの法則」と呼ばれています。
この光の屈折は専門的な言い方をすると「光は一様な媒質中で直進し、異なった媒質との境界面では屈折して方向が変わる」ということになります。媒質とは、入射した光が伝わっていく物質のことです。たとえば、空気や水、ガラスといったものが挙げられます。
このように、光は一様な媒質の中では直進して方向を変えることはありません。光の方向を変えるには、異なる媒質の中に光を入射させる必要があり、レンズの役割はこの光の進行方向を変えることにあります。
レンズの種類
一般的にレンズは球面の形をしていて、それを球面レンズといいます。また同じ球面レンズでも、その形から大きく分けて凸(トツ)レンズと凹(オウ)レンズがあります。レンズの中心部が周辺部分より厚い場合は凸レンズ、逆に薄い場合は凹レンズといいます。
両凸レンズで像を作る仕組み
レンズはガラス材料から作られていて、形状は球面になっています。左図のように入射した1本の光線は、レンズによる2回の屈折を経て方向変換を行います。
また、レンズの中心線を光軸といいます。
説明を進めていくにあたり、ここで予めお断りしておくことがあります。今後の図説では、レンズによる2回の屈折は省略して表します。オレンジの線で囲んである図のようになりますよ。
球面レンズでは、レンズ表面の湾曲の度合いによって入射光の進路をコントロールし、望んだ場所に像を作ることができます。たとえば、電球のように四方八方に光が広がる光源のことを点光源といいますが、この光のうちレンズに入る光は球面で進行方向が変化します。そして、レンズを通って出た後の光は、左図のように一点に集まります。光を一点に集めることで、像を作るのですね。
今度左図のように、レンズに正対する位置にロウソクを置いてみましょう。ロウソクのように形のある物は、小さな点状の物質がたくさん集まってできています。そのたくさんある点状の物質一粒一粒がそれぞれが光を反射し、反射した光は四方八方に広がっていきます。四方八方に広がった光の中でレンズを通った光は、上の例と同じようにレンズの反対側で一点に集まります。こうして、ある一点にロウソクの形の像が浮かび上がるのです。この光の集まる場所につい立て(スクリーン)を置けば、ロウソクの像が写ります。こうしてレンズの反対側に光が集まってできる像のことを「実像」といい、実像は逆さまに写ります(図では、ローソクの一番上と一番下の点から出ている光のみ、示しています)。
両凹レンズで像が出来る仕組み
凹レンズを通る光は拡がっていく性質があり、これを拡散といいます。
左図では、点光源から出た光のうち、2本の光線がどのように拡散していくのかを示しました。図のように拡散していくと点光源から出た光は一点に集まることがないので、実像は得られません。しかし、拡散した光を逆方向へ伸ばすと一点に交わるのがわかりますね。凹レンズを通して見ると、この交わった点に像があるように見えるのです。
この像のことを、実像に対して「虚像」といいますが、この現象は人間の脳が「光はまっすぐ進む」と認識しているために起こる錯覚です。
次の図では、点光源をロウソクに置き換えて、そのてっぺんから出ている光線のうち2本を代表に、凹レンズでの拡散の様子を示しました。
人間の脳は入ってきた拡散光を「まっすぐ進んでいる」と認識しているので、レンズを通して覗いた場合には、拡散する光線を逆方向へ伸ばした交点にロウソクの虚像を見ることになります。また、この虚像は物体に対して正立していることがわかりますね。
凹レンズでは虚像しかできませんが、凸レンズでは実像だけでなく虚像も作ることができます。このことは最後に説明します。
光線の通る道筋
球面レンズが光の屈折の法則に従うとき、物体から出る光はレンズの持っている重要な特性である「焦点(F)」などによって、通る道筋が決まります。
・凸レンズの場合
1. レンズの中心を通り抜ける光の方向は変わらない。
2. 光軸に平行な光はレンズを通ったあと焦点を通る
3. 焦点を通った光はレンズを通った後、光軸に平行な光になる。
・凸レンズの場合
1. レンズの中心を通り抜ける光の進む方向は変わらない。
2. 平行な光はレンズを通り抜けた後、焦点から出たように拡散していく
3. 焦点に向かってレンズに入った光は、レンズを通り抜けた後、光軸に平行になる。
光線の通る道筋で作る図
凸レンズでは、上で説明した代表的な光の進路にしたがって、下のような図を描くことができます。
凸レンズは実像だけでなく、虚像も作れると説明しました。上図のように物体をレンズの焦点よりも遠くに置いたときは実像ができますが、下図のように物体を焦点よりもレンズに近い位置に置いたときには、虚像ができるのです。
この場合も、レンズを通った光は拡散して交点を作らないので実像はできませんが、レンズを通り抜けた光線を逆に伸ばしてぶつかる交点に虚像ができます。レンズを覗いて見ると、あたかもそこに像があるかのように見えますが、実際に光が集まってできた像(=実像)ではなく、人間の目(脳)が『そこに像があるはずだ』と錯覚するから見えるのです。
さて、このレンズによってできる実像と虚像は、日常ではどのように使われているのでしょうか??
たとえば、カメラやプロジェクター、コピー機など、像を記録したり、像を投影する機器は、すべて実像を利用しています。一方、望遠鏡や顕微鏡など、レンズを通して像を観測する機器では、虚像が利用されています。
以上、小学生のみなさんには難しい内容ですが、なんとなく理解するだけで十分です。今後、中学校や高校の授業でレンズの勉強をすることがあるでしょうから、そのときにまた考えてみてください。今よりは、もっともっと理解が進むと思いますよ。