「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
コピー機の部品に関する質問
瀧澤百合子さんからの質問:
「コピー機の中に入っているレンズの役割について、詳しく教えてください」
レンズは小さな物を拡大して見やすくするとか、その逆に大きなものを縮小して全体を見えるようにするなど、「物を拡大したり縮小したりする」役目があります。 小さな物を拡大して見やすくする例としては、虫メガネや望遠鏡がありますね。 大きな物を縮小して、全体を見えるようにするものにはどんな例があると思いますか? たとえば、カメラのレンズがあります。 カメラは風景などの大きなものを小さなフィルムの中に収めなければなりませんので、縮小しているのですね。
たとえば目の前に広がる風景を写真に撮るには、この風景がフィルムの面にきれいに縮小されて映し出されなければなりません。 この、「風景を縮小してフィルム面に綺麗に写すこと」が、カメラにおけるレンズの役割となります。
図で説明してみましょう。 瀧澤さんは今、下のような風景を写真に撮るためにカメラを構えました。
カメラを構えてシャッターを押しました。 するとシャッターが開いたわずかな時間のあいだ、フィルムの面に風景の縮小された像が映し出されます。 この映し出された像をフィルムが記録しているのです。 像がボケていると、フィルムはボケた像を記録してしまいますので、きちんとピントがあった像を映し出すことが重要になります。
この関係の全体を絵に表わすと、下図のようになります。 風景がカメラのレンズによって縮小されて、フィルムの面に映し出されます。
これは銀塩(フィルム)カメラの例ですが、デジタルカメラではフィルムにあたる部分に、CCDと呼ばれる電子部品が組み込まれています。 CCDは光を感じて電気信号に変換するセンサーで、画素と呼ばれる小さな素子がたくさん集まってできています。
「このデジタルカメラは800万画素です」といった言葉を聞いたことがありますか? これは、この画素とよばれる小さな素子が800万個あります、という意味です。ずいぶん沢山ありますね。
この画素には、光の強さに応じた電気(電荷)が蓄えられます。 これによって画像の情報を記録する仕組みになっています。 画素数が多いほど画像の情報を記録する密度が高いといえます。
このCCDは、カラーコピー機でも使っていましたね(テキストの25ページに記述してあります)。
それでは、次にカラーコピー機に入っているレンズの役目を考えてみましょう。
基本的には、カメラのレンズと同じ役目を担っています。 カメラで撮る風景に相当するのが原稿ですね。 そしてその情報を記録するのが、フィルムに代わってCCDということになります。 つまり、「原稿の縮小された像をCCD面に綺麗に投影して映し出すことが、コピー機のレンズの役割」ということですね。
でも、カメラの場合とは少し違ったところもあります。 上の例では、カメラのレンズは風景全体を映し出しましたが、コピー機の場合は原稿の10〜20mm程度の範囲しか映し出されません。
たとえば、下記のような原稿があったとします。
この原稿を、原稿台においてコピーボタンを押すと、ランプが点灯して、順次、原稿の端から端へ照明していきますが、その照明される幅は10〜20mm程度です。 そして、照明のあたっている原稿の領域の像のみがレンズで縮小されてCCD面に像を作ります。
下の絵に示したように、一度に照明できる原稿の幅は狭いのですが、この幅で順番に原稿の端から端に向かって移動しながら、原稿全体を照明していきます。
したがって、CCD面に投影される縮小された像は下記のような狭い領域の画像になりますが、このような像が連続的に切れ目なくCCD面に投影されていくのです。
CCDは7,300個のセンサーが一列に並んだ構造になっています。 このCCDを3個並べ、また各CCDには赤(R)、緑(G)、青(B)の、光の三原色フィルターをかけてあります。
このようにして映し出された像を、各色のセンサーが同時に1列分の幅ずつ、次から次へと読み取っていくのです。 また読み取った情報は、CCDから順次カラーコピー機の画像処理部へと送られ、蓄積されていきます。
今までの説明を絵にしますと、下図のようになります。 これは、原稿台の上に置いた原稿を縮小した全体像を、CCD表面に投影している状態を表しています。 カメラで風景を縮小した像をフィルム面に投影する時と似ていますね。 ただカメラは風景全体を投影していましたが、カラーコピー機では原稿が照明されている10〜20mm程度の画像の投影となります。
ところで、レンズから物までの距離をa、レンズから像を結ぶ位置までの距離をbとし、レンズの焦点距離をfとした時、次の公式が成り立ちます。
こうしたレンズの仕組みは、小学校ではまだ習いませんね。 ですから、この式を覚える必要はありませんが、ここで言いたいのは、この絵のままだとコピー機の原稿を置く台の高さが高くなって、使いにくくなるということです。
そこでこの関係を保ちながら、鏡を使って像を結ぶ光線のほうを折り曲げて、原稿台の位置が高くならないようにしています。 このように鏡で光線を折り曲げても、前の式の関係が保たれていれば、像はボケないでしっかり記録できるのです。
コピー機の高さが高くなりすぎないよう下図のような構造になっています(この図はテキストの24ページに書かれているスキャナーの図と同じですね)。
なおカラーコピー機などで使用しているレンズは、たいへん複雑にできています。 原稿に忠実な綺麗な像を作るため、複数枚のレンズを組み合わせています(=単純な凸レンズではありません)。 このレンズ群は6枚の組み合わせからできています。
以上で、瀧澤さんの質問にたいする回答とさせていただきます。
聞きなれない言葉があり、小学生の瀧澤さんには難しい回答であったと思います。 事実、難しいですよね。 ゴメンナサイね。 細かいところは理解できなくてもいいです。 おおよそのことを理解していただければ充分です。