「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
コピー機の部品に関する質問
鏡田奈央さんからの質問:
「感光体シートは何からできているのですか?」
感光体シートは何から出来ているのですか?という質問ですが、お答えする前に感光体とはどのような性質を持っている物質なのか?もう一度、確認しておきましょう。
感光体は光に感じる物ということで、感光体と名付けています。まず、どのように光に感じるかを説明します。
皆さんが使っている電気は、電線の中を流れています。電線は樹脂のチューブで覆われていますが、中の電線自体は何でできているか知っていますか?電線は電気を流しやすい、銅の細い線の束をよじって作られています。銅にかぎらず鉄やアルミなどの金属は電気を流しますが、銅は特に電気を流しやすい性質を持っています。ガラスや樹脂や紙などは、逆に電気を流しにくい物質です。このように物質には、電気を流しやすい物質と流しにくい物質があります。
電気を流しやすい物を「導体」、流しにくい物を「不導体」と呼んでいます。
コピー機では静電気を使いますが、静電気もおうちで使っている電気と本質的には同じものです。つまり、静電気も電気です。電気は同じ場所にとどまることができず、すぐに流れてしまいます。ですが、静電気は電気を流しにくい物質の上に貯めておくことができます(電気を流しやすい物質では、静電気も普通の電気と同じように流れてしまいます)。
さて。感光体と呼ばれる物質は、暗いところでは電気を流しにくい性質を現しますが、光があたると電気を流しやすい性質へと変化する特殊な材料からできています(それも、光が多くあたるほど電気を流しやすくなる性質を持っています。金属やガラスなど一般的な物質は、光が有っても無くても電気の流しやすさの性質は変化することがありませんが、感光体は光の有り無しで、電気の流しやすさの性質が大きく変化するのが特徴です)。
コピー機は、感光体のこの特殊な性質を利用して、光の当たらなかった所に静電気を残し、原稿と同じ形の静電気の像を作ります。
感光体に適した性質を示す材料は、何種類か発見されていますが、「コピー機になってみよう!」で使っている感光体シートには、酸化亜鉛という金属酸化物を使っています。酸化亜鉛は白い粉末状の材料です。右の写真のように、酸化亜鉛は白い粉末状の材料ですが、これを溶液などに溶かして電気を流しやすいシートに塗り、乾かしたものが感光体シートです。
酸化亜鉛には毒性がないので、塗料や化粧品、医薬品など、さまざまな製品の材料として使われていました。また、光を感じて電気を流しやすくなったり、流しにくくなったりする性質のあることが発見されてからは、感光体の材料としても利用されるようになりました。ですが、その後もっと優れた電気的特性を持つ材料が発見され、最近のコピー機では新しい材料に置き換わっています。
今では感光体の材料としては、ほとんど使われなくなった酸化亜鉛ですが、シート状にも加工しやすく便利なため、「コピー機になってみよう!」で使っています。