コピーの不思議Q&A|Ricoh Japan


コピーの不思議Q&A


「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。


コピー機の構造に関する質問コピー機の構造に関する質問

近藤可奈子さんからの質問:

「コピーができる電話機もあるけど、電話機の中には静電気やトナーがあるのかを知りたいです」

ファックス電話機電話とファックスが一体になっている機器に対する質問として回答します。

結論から言いますと、一般の家庭で使われているファックス電話機に、静電気やトナーは使用されていません。では、どのような仕組みで紙に画像(コピー)を作っているのでしょう。

原稿と同じ画像(コピー)を作り出す基本動作は、ファックスもデジタルコピー機も同じです。「原稿を読み取る」→「画像データを作る」→「画像データを書き込み装置に送る」→「書き込み装置で描く」という基本動作から成り立っています。しかし、使っているものが大きく違います。



デジタルコピー機の場合
原稿を縦と横の線で細かい領域に分割し、一つ一つの領域に絵や文字があるかどうか、CCD(センサー)で読み取っていきます。そして、絵や文字があるところは「1」、何もないところは「0」というデータとしてコンピューターに情報を蓄えます。この画像データを書き込み装置に送り、レーザーで感光体に書き込んで静電気の像を作ります。その感光体上の静電気の像に、粉のインクであるトナーを付着させ、紙に転写して画像(コピー)を作ります。

ファックスの場合
デジタルコピー機と同様に、原稿をCCDで読み取り「0」と「1」からなる画像のデータを作ります。この画像データを、電話回線を使って送信先のファックス電話機に送ります。送った先のファックス機器は、画像データを書き込み装置である発熱体ヘッドに送り、発熱体ヘッドの熱でインクシートのインクを溶かします。この溶けたインクを紙に転写し、画像(コピー)を作ります。

以上のようにそれぞれ大きく違う点がありますが、聞き慣れない言葉があったりして、なんだかよく解らないかもしれません。ファックスがどのように画像を作り出しているのか、もう少し詳しく説明しましょう。

原稿の読み取り装置

ファックス機器の一例左の図にファックス機器の一例を示しました。この装置に、裏返しにした原稿を通します。すると、原稿が読み取られ、すぐに下のほうから出てきます。



デジタルコピー機の読み取り装置デジタルコピー機の場合は左の図のような装置で原稿を読み取っていました。詳しくは、テキスト(青本)の20ページに記載しています(また、読み取り装置の仕組みについて回答した質問がコチラにありますので、興味のある方は読んでみてくださいね)。



ファックスの場合は、下図のような装置で原稿を読み取っています。デジタルコピー機とは違って、原稿がガラスの上を移動していきます。この移動中の原稿をLEDなどのランプで明るく照らし、その照らされた部分の像がレンズによってCCD(センサー)面に映し出されます。この映し出された像を、CCDがタイミングをとって一行毎に原稿の先端から後端まで読み取っていきます。読み取られた画像データは「0」と「1」という数字の情報として蓄えられ、ファックスで相手に画像を送るときは、この数字のデータが送られることになります。

ファックスの読み取り装置

書き込み装置

ファックスを受信すると、コピーされた用紙が排出口から出てきますファックスを受信すると、相手から送られてきた画像が右の図のように出てきますね。これはどの様な仕組みで画像(コピー)が作られるのでしょう。



インクリボンに熱を加えて紙に転写しますファックスは静電気や感光体、レーザーやトナーなどを使いません。トナーなどの代わりにインクを含んだシートを使います。これをインクリボンと呼んでいます。右の図の様にインクリボンに熱を加えると、固まっていたインクが溶け、重ねた紙に転写されます。これが、画像を作る基本原理です。



ローラーとインクリボンで挟まれた用紙は、発熱体ヘッドのある部分でインクが転写されますこの熱を加える装置を「発熱体ヘッド」または「サーマルヘッド」と呼び、右の図の様な構成で使われています。発熱体ヘッドは書き込み装置であり、数値として送られてきた画像データによって、選択的にインクに熱を加えます。インクシートと同じ方向、同じ速度で移動している紙に、熱で溶かされたインクが転写され、紙に画像(コピー)が作られます。



発熱体ヘッドはデジタルコピー機のレーザー装置に代わるものですが、光ではなく熱によって書き込んでいるのですね。下図に発熱体ヘッドのイメージ図と、その一部の拡大図を示しました。ちょっと解りにくいかもしれませんが、大体のイメージをつかんでくださいね。

発熱体ヘッド

下図の様に一番右の電極を電極1とし、2番目の電極を電極2として、青い線で囲んだ部分を拡大した断面図を右に示します。

発熱体ヘッドは、電極のある保護層の下に発熱抵抗体、蓄熱槽、基板があります

電極1、2に電圧をかけると、その間の発熱抵抗体が熱せられますこの電極1と電極2に電圧(一般的には24ボルト)を加えると、電流が流れて発熱抵抗体と呼ばれる部分が急激に熱せられます。その熱でインクを溶かし、紙に転写するのです。



つまり、各電極は画像信号に応じ、「0」のところは電圧をかけず、「1」のところは電圧をかけるようになっているのです。下図のように選択的に発熱抵抗体を熱し、インクを溶かすことができます。

画像信号により電圧をかけるので、選択的に発熱抵抗体を熱することができます

そして溶けたインクの小さな点(ドット、または画素と云います)は、たくさん紙に転写されます。その小さな点の集まりが、ひとつの文字や絵になるのですね。
溶けたインクの点は、たくさん集まってひとつ絵や文字になります

転写し終えたインクリボンは、巻き取りローラーで回収されますまた、インクリボンは左の図の通りローラーで抑えられ、紙としっかり密着しています。発熱体からの熱がインクを溶かし、固まっていたインクを紙に定着した後は、巻き取りローラーによって回収されます。




以上、ファックスでの画像を作り出す基本的な仕組みを説明しました。このような仕組みが、電話とファックスが一体になった小さな機器に入っているのですね。ちょっと難しい内容を含んでいますので、イメージがつかめればそれで十分です。