「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
コピー機の構造に関する質問
石井博己くんからの質問:
「 色の粉がどこで混ぜられるか教えてください」
結論からお答えしますと、カラーコピー機では色を混ぜているというよりも、「色を重ねている」という表現が近いのです (コピー機の内部では、4色のトナーを混ぜ合わせて色を作っているわけではありません)。
もちろん、単に重ねただけでは色が綺麗に出ません。 そこで定着装置というトナーに熱と圧力を加えて溶かす装置がありますが、この定着装置で「重ねた4色のトナーを溶かし、混ぜる」ことにより、綺麗な色を出しています。
以下、もう少し詳しく説明します。
色のついた粉は、トナーといいます。 トナーには色の三原色であるシアン・トナー(青っぽい色)、マゼンタ・トナー(赤っぽい色)、イエロー・トナー(黄色)があります。 そして、この三原色にブラック(黒)を加え、合計4色のトナーがカラー・コピー機の中に入っており、これらの色の重ね合わせで、様々な色を作り出すことができます。
カラー・コピー機の中にある、これら色を付ける装置は下の図のような構造になっています。
コピー用紙は、この図の右下から入って、紙の上に順次各色のトナーを重ねていき、最後に左上の定着部で熱を加えられて、トナーは溶けてコピー用紙の上にしっかりとくっつきます。
コピー用紙が定着装置に入る前と後の、トナーの状態について説明しましょう。 定着装置に入る前は、コピー用紙にはトナーが粉の状態で紙についています。
この、粉の状態では、綺麗な色は出ていません。
粉の状態のトナーは、定着を通過する時、200℃くらいの高い温度で暖められて、溶かされます。 そうすると「粉の状態」から薄い「膜の状態」になり、綺麗な色が現われてきます。 膜の状態は表面が滑らかですが、溶ける前の粉の状態は表面がデコボコしていますので、あたった白色光が色々な方向に反射(乱反射)して、綺麗な色が出ません。 この状態を下図に示しました。 この図では、参考としてマゼンタ・トナーとイエロー・トナーをコピー用紙に重ねた状態を示しました。
絵の具で様々な色を作る時には、筆で色を混ぜます。 ですが、カラーコピー機(印刷でも同じですが)では、色を混ぜる必要がありません。 色を重ねれば良いのです。なぜでしょう? 不思議ですね。
この謎への詳しい回答は、テキスト(青本)の12ページから15ページ、「4. 色重ねの秘密」に書かれていますが、それはさておき、トナーと絵の具のこの違いは、使っている色材の、光を通す能力が高いか低いかに起因します。 トナーに使っている色材やフィルターは、光を通す能力が非常に高いのです(この光を通す能力を、透明性あるいは「透過性が高い/低い」といいます)。
トナーは透過性の高い色材なので、トナーの表面にあたった白色光はトナーの層を通過して紙の表面まで到達し、そこで反射されて、またトナー層を通過して私達の目に届きます。 いっぽう、絵の具は透過性が低いので、光は絵の具の中を通ることができません。 ですから、絵の具の表面で反射した光のみが私達の目に届きます。
絵の具で色を作る時には、色を混ぜ合わせて「表面に出しておく」ことが必要なのです。
トナーは透過性が高いので、イエローとマゼンタを重ねておけば、光はイエローを通過し、マゼンタを通過したあと綺麗な赤色として目に返ってきます (イエローとマゼンタを重ねて赤色ができることは、テキストの17ページにも書かれています。参考にしてください)。
絵の具は透過性が低いので、絵の具の表面で反射した色光によって色が決まります。 イエローとマゼンタを重ねて塗ってしまうと赤にはならず、上に塗った(最後に塗った)イエローの色が見えることになります。
絵の具で赤を表現する際には、あらかじめ色を混ぜて赤色を作っておかねばならないわけです (ただ実際は、絵の具のには最初から赤が用意されていますので、混ぜて作る必要はありませんが...)。