「不思議だなぁ...」と思うことが、科学する心の第一歩です。みんなが毎日便利に使っている機械の内側には、そんな不思議の秘密がぎっしり詰まっています。「キッズのためのQ&A」では、タカハシ博士とコーラ隊長が、皆さんから寄せられたコピー機、プリンター、ファックスについての質問にお答えします。なぜだろう?不思議だなぁ!と思ったら、ここをクリックしてメールで質問を送ってください。
コピーの仕組みに関する質問
岡部佑紀さん、佐々木 望くん、竹川 綾さんからの質問:
「カラーコピーではどうやって色を分けるのですか?」
「コピーの色を混ぜることはできますか?」
カラーコピー機の原理は、基本的には白黒のコピー機と同じです。
つまり、感光紙に原稿の像を投影して静電気の像を作り、そこにもう一度、静電気の力でトナー(粉のインク)を吸着させ、感光紙上にできたトナーの像を紙に移し、熱でトナーを融かし、しっかり紙に定着させます。
ただ違うのは、白黒コピーでは使われている色は「黒」しかありませんが、カラーコピーの場合は色んな色が使われている原稿から、同じ色のコピーを作らなければなりません。 そのため、白黒コピーではトナーは黒1色しかありませんが、カラーコピーには「色の三原色」といわれる三つの色のトナーが必要です。 その三原色とは、シアン(水色=C)、マゼンタ(赤紫=M)、イエロー(黄色=Y)で、右図のような色合いをしています。
この三つの色を重ねることで全ての色を作り出せるので、このシアン、マゼンタ、イエローを「色の三原色」と呼んでいます。
右の絵では、マゼンタとイエローを重ねると赤色(R)に、シアンとイエローを重ねると緑色(G)に、シアンとマゼンタを重ねると青色(B)になることが示されていますが、 このRとGとBのことを、色の三原色(CMY)に対して、光の三原色(RGB)と呼びます。
色の三原色であるシアンとマゼンタとイエローを重ねると黒色(K)になり、このように色を重ねるごとに暗くなる色の混ぜ合わせを「減法混色」と言います。
光の三原色であるレッド、ブルー、グリーンを重ねると白になり、このように色を重ねるごとに明るくなる色の混ぜ合わせを「加法混色」と言います。
さて。この色の三原色であるシアンやマゼンタ、イエローの色の濃さをそれぞれ変えて重ねてやると、薄い青や濃い青、薄い緑や濃い緑、薄い赤や濃い赤など、様々な色を作り出すことができます。
カラーコピー機の場合は、原稿の様々な色が、「色の三原色」をどの程度の割合で含んでいるかを抽出して、その割合に応じて「色の三原色」毎に静電気の像を感光紙上に作らないといけませんから、感光紙も3つ必要になります (白黒コピーでは色が黒1色だけですから、感光紙は1つで足ります)。 それら3つの静電気の像に、それぞれの色のトナーを吸着させます。
この3つの色のトナーを順番に紙に転写して重ねあわせ、定着装置で熱を加えてトナーを融かすと、三原色の色が混ざり合って原稿と同じ色のコピーができるのです。
三原色のトナーが融けて混ざり合い、原稿と同じ色味になるためには、原稿の様々な色に「色の三原色」がどの程度含まれているかを抽出しなければなりません。 この抽出のことを「色分解」と呼んでいます。以下に色分解の原理を説明します。
上の絵のような4本の色の線が描かれた原稿があったとします。
この原稿に「光の三原色(「色の三原色CMY」ではなく「光の三原色RGB」)」である赤(R)、緑(G)、青(B)のフィルターを重ねます。 するとフィルターの色によって原稿の色の濃さが変わってきます。
例えば青フィルターでは黄色が一番濃く見えますね。 緑フィルターでは赤っぽい線が一番濃く見えます。 赤フィルターでは青っぽい線が一番濃く見えます。
これはどういうことを意味しているかというと、青いフィルターを通して見ると、色の三原色のうち、イエローを多く含んでいるほど濃く見えるのです。 同じように、緑のフィルターでは、マゼンタを多く含んでいるほど濃く見えます。 赤のフィルターでは、シアンを多く含んでいるほど濃く見えます。
このように原稿に「光の三原色」であるRGB色のフィルターをかけて、その濃度をセンサーで読み取ることで、原稿の様々な色が「色の三原色」をどの程度含んでいるかを抽出することができるのです。
それでは、カラー原稿を色分解して「色の三原色」ごとのトナー像を作って、それらを重ね合わせてカラーコピーをつくる様子を見てみましょう。
カラー原稿
今、右のようなカラーの原稿があったとします。
この原稿から、色の三原色をどの程度含んでいるかを抽出します。
色の三原色を抽出するには、上に書いた通り、「光の三原色」である赤R、緑G、青Bのフィルターを使います。 シアンを抽出するには赤フィルターを、マゼンタを抽出するには緑フィルターを、イエローを抽出するには青フィルターを使います。 フィルターとは、色付きのセロファンのようなもの、と思ってください。
シアンの抽出
皆さんが体験した「コピー機になってみよう!」の実験では、感光紙の上に原稿の黒い線を投影して光をあて、黒い線以外の部分の静電気を消すことによって、目に見えない静電気の像(=潜像)をつくりましたね。
原稿に含まれる様々な色の中からシアンの色だけを抽出して潜像を作るためには、感光紙に原稿と共に赤フィルターを重ねてから光を当てます。 こうしてできた静電気の像に、シアンの色のトナーをつけると、感光紙上には上の絵のようなシアン・トナーの像が得られます。
マゼンタの抽出
今度は、緑フィルターを使って、シアンの時と同様に原稿に含まれる様々な色からマゼンタ成分を取り出し、感光紙上にマゼンタ・トナーの像を作ります。 すると上の絵のようなマゼンタの像が得られます。
イエローの抽出
最後に、青フィルタを使って、同様に原稿の色からイエロー成分を取り出し、感光紙上にイエロー・トナーの像を作ります。すると上の絵のようなイエローの像が得られます。
三色画像の重ね
こうして得られた、シアン、マゼンタ、イエローのトナー像を、位置を合わせ重ねるようにして紙に転写します。 トナーを紙に移す方法は、皆さんが実験で行った「転写」と同じです。ですが、カラーコピーの場合はトナーの数だけ、3回転写します。
例えば最初にシアンのトナー像を紙に移し、その紙にマゼンタを移し、さらに同じ紙にイエロー像を移します。 そして、三色が重なったものに熱を加えてトナーを融かし、紙にしっかりとくっつけて、カラーコピーが完成します。
以上、カラーコピーの基本的なことを説明しました。
このお話は、小、中学生の皆さんにとっては少々難しいので、判りにくかったと思います。 大まかに、こんな風にしているんだということを知って頂くだけで良いです。